国連により採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を指針に様々な取り組みを行っています。
(大人の健康指導、子供の健全育成を図る活動、Let’s save the earth!)
巻頭言
新年を迎えた年賀状などの挨拶文が、コロナ禍もあり「本年も良い年でありますように」が「本年こそ良い年になりますように」になってきたようです。
私にとっては、企業の経営者としてもNPO法人の理事長としても躍進の年ではありましたが、秋に旭日双光章の叙勲が最も大きな出来事になりました。経営者としてのモットーとして「企業と従業員とお客様の三位一体の利」と、関係していただいている皆様との縁とご発展を求めてまいりました。叙勲も、また皆様方あっての賜物と思っています。
民放テレビ番組の創成期の人気俳優の大村崑さんと親しくお話する機会がありました。「番頭はんと丁稚どん」「やりくりアパート」「頓馬天狗」などの主演スターで、91歳の現在も活躍されている俳優さんです。
また、筑波大学大学院教授の山田実先生の講演を聞く機会もあり、そのテーマは「コロナ禍における介護予防・フレイル対策について」でしたが、そのお話の中で、「社会参加習慣」と「運動習慣」と「良い食習慣」の3つが必要でその説明の画像が3輪トラックで表現されていました。「やりくりアパート」のことを思い出した理由は、その番組がダイハツの提供で当時のCM商品が小型3輪トラックであることを記憶していたからです。
企業も三位一体が肝心と述べさせていただきましたが、SDGsでは持続可能な社会を目指していますが、その中心は「人と自然と社会の健康の保持と増進」の三位一体がテーマだと思ってSDGsに取り組んでいる次第です。
さて、気候変動が近年大きく叫ばれるようになってきました。同時に、天気予報が天気予想に替ってきたように思えます。アメダスによって近々の天気予報はまあまあ当たっているようですが、毎日のテレビのニュースで見ていても、日々、天気予報は変化していると感じています。
この気圧配置等の天気図なら、今以降こうなるであろうとの過去何年かの統計から導き出されていると聞きました。昨今の気候変動は偏西風やジェット気流まで、位置の変動があるので過去データからの予測はむつかしくなったのかも知れません。
一方、天気予報とは異なり、人の健康はその人の持って生まれたものと環境の影響によって変動していきますが、その人の過去データの積み重ねから健康予測はできるといっても過言ではないようです。集団と集団の比較ではなく、単年度の基準値と比した指導でもない、その人の経年でのデータによる判定・指導こそが、健康経営であり持続可能な社会の基礎となると思っています。
SDGsの理解も少しずつ深まってきたように思えますが、「今年こそ」ではなく、「今年も良い年でありますように」を目指して邁進したいという言葉で新年号の挨拶に代えさせていただきます。
Life on Land 森を守る
Life on Land
森を守る
森林サービス産業の取組について
林野庁 森林利用課 藤岡義生 課長補佐
1日常生活での森林空間利用の提案
これまでの森林空間利用は、キャンプや登山、自然探勝など山や森林に関心のある個人やグループなどが休日に非日常を楽しむものが主体で、多くの個人は山や森林に遊びに行っていません。また、遊びに行く人の1回当たりの消費額も少なく、オフシーズンの平日などは観光需要が少ないなどの課題に加えて、1990年代後半からはスキー場やキャンプ場の利用者の減少、アスレチク、散策路・遊歩道等の老巧化など、豊かな森林を抱える地域には多くの課題があり、従来の方法だけでは森林と人との接点を広げることが困難になっています。
一方で、近年は、国民の生活スタイルが「モノ消費からコト消費」へ、また「経済的な豊かさから心の豊かさの重視」へ志向が変化するとともに、企業経営では「働き方改革」や「健康経営」への転換などの取組が求められており、こうした変化・ニーズへの対応方法の一つとして森林空間を利用する新たな動きが国民や企業の間で広がっています。
森林浴をはじめ森林空間で過ごすことは健康増進などに効果があることを私たちは体験的に理解していますが、私たちの社会はこのような効果を日常生活で十分に享受できていない現状にあります。こうしたことから林野庁では、人生100年時代の中の様々なステージや場面において、森林とのふれあいや森の恵みをいただきながら、健康で文化的に楽しく心豊かに暮らすライフスタイルを「フォレストスタイル」として提案しています。(図1参照)
フォレストスタイルがこれまでの森林空間利用と異なるのは、ガイド等が体験プログラムを提供し、森の恵みをより効果的に感じさせてくれること、企業の社員やテレワーク導入企業など山や森林に関心のない層を含む集団を顧客層としていること、平日利用や長期滞在利用を目指していることです。
このようなライフスタイルが定着すれば山村地域に新たな雇用と収入機会を創出することができ、山村振興に貢献できることになります。また、現在、我が国では、人口減少社会、人生100年時代、超スマート社会が同時に到来する中、働き方改革の実現、健康寿命の延伸、アクティブラーニングや新しい生活様式の実践などの社会課題の解決が急務となっていますが、このような森林空間の利用が社会や企業の課題解決に貢献できる可能性がでてきています。
2 フォレストスタイルを支える森林サービス産業とその仕組みづくり
フォレストスタイルは、複雑化していくこれからの時代を生きていくための「Well-Being」なライフスタイルですが、これを実現していくためには、森林サービスを提供する事業者の存在や森林所有者の協力が欠かせません。また、森林サービスの提供も、単に自然を案内するだけではなく、森林の恵みを五感で感じられるように、またサービス利用者の喜びや幸せにつながるようにガイドをすることが求められます。さらに、無関心層を含めた利用者を平日に増やしていくためには、企業や学校などに対してサービス利用を働き掛けていくことが必要になりますが、先進的な地域では、企業と協定を締結することでその実現につながっているところも見られます。
現在、林野庁では、健康分野に焦点を絞って、このような森林サービス産業の創出・推進に取り組んでいます。近年ではスマートウオッチやスマホアプリなどを活用することで運動や睡眠に関する様々なデータを自動で計測することができるようにもなりました。こうしたデータを森林サービスの利用前と利用後で比較することで、その効果を定量的に説明できるようになります。
また、こうした健康分野に関するサービスを核としながらも、宿泊・飲食やワークスペースなどの周辺サービスを複合的に組み合わせることで事業化につながりやすくなりますが、企業・医療保険者、研究機関、コンサル、旅行業界など様々な業界との交流・連携が不可欠です。(図2参照)
山や森林に関心のある層に対しては、感性に訴えかけるような従来のプロモーションでも効果的でありましたが、無関心層、特に企業や医療保険者に対しては、どのようなメリットがあるかを定量的に説明しなければ森林サービスの利用につながらない可能性があります。
3 エビデンスの構築に向けて
森林空間利用による効果に関するエビデンスについては、これまでもリラックス効果やストレスホルモンの減少といった心身に及ぼす影響について一定の効果が確認されてきましたが、企業の「健康経営」において森林活用を促進していく際には、企業・医療保険者等を取り巻く状況や法制度等を踏まえ、さらに企業・医療保険者等のニーズ等を十分に把握した上で、企業の「健康経営」の視点に合わせたエビデンスの取得・集積をしていくことも必要です。具体的には、個人の健康増進、機会損失の削減、生産性の向上など「個人への効果」のほか、組織の活性度、人材の確保など「組織への効果」を計測することが考えられます。
また、森林空間における保養活動等を通して、健康への気づき・動機付けを図り、日常の生活習慣の行動変容につながっているかという視点でのエビデンスの取得・集積も必要です。これは森林サービスの提供の事前、実施、事後の3段階でエビデンス取得を行うことが必要となりますが、加えてサービス利用者の行動変容につながるようなガイド技術の向上も求められます。従来のガイドは森林を案内することが主たる目的でしたが、新たな森林空間利用ではサービス利用者のニーズに応じて体験プログラムを改善することが求められます。また、このような行動変容のステージに応じてコーチングができる技術が身につけば、サービス利用者がまた来てみたいと思い、リピートにつながる可能性もあります。(図3参照)
4 おわりに
近年、「関係人口」が注目を集めており、過疎地域の振興の面から語られることが増えていますが、SDGs やWell-Being など都市部の人々にとって、その実現が困難なことが山村では特に意識せずに取り組めている場合もあり、山村が貴重な活動の場として映っていることもあります。
森林空間における新たなサービスの台頭は、医療・福祉、教育・学習支援、観光・旅行、娯楽等の分野において、森林空間利用に現代的な価値を見いだしてビジネス化を図り、産業化に繋いでいける可能性があることを示しています。
また、森林内での活動による従業員の健康改善やモチベーションの向上、企業の生産性の向上などについて定量的な成果が積み上がってくれば、さらに「森林との関わり」を進める企業が増えてくることが期待できます。
林野庁では「森林サービス産業」の創出・推進を通じて、人生100年時代のライフステージの様々な場面において、森林と関わり、その恵みを享受し、健康的で心豊かな暮らしを育む生き方、つまり「森林と人との新たな関わり方」である「フォレストスタイル」が国民に浸透するとともに、国民運動として展開されることを期待しているところです。
Life on Land 離島・半島の活性化
Life on Land
離島・半島の活性化
「離島こそSDGsがピッタリ当てはまる」
日本は7千弱の島によって構成されている島国です。このうち、北海道、本州、四国、九州、沖縄本島を本土として、その他の島は離島と呼ばれています。
この島の話とSDGsがどのように関わるのでしょうか。その話をする時に、紹介したい話題の一つが離島経済新聞に掲載されている以下の記事です。
「島と世界とSDGsを考える上で、特筆したい話題がある。2017年1月31日、朝日新聞社がSDGsキャンペーンをスタートさせた際に、その目玉として島根県の離島・海士町を特集したことだ。」 中略
「日本社会におけるSDGsの認知度は現在でも25%程度。3年前は、ほぼ無名である。何を伝えればSDGsの概念が社会に伝わるのか。取材候補のリストに並んでいた廃校寸前の高校を再生させた海士町の取り組みに、一同の目が止まった。」 中略
廃校寸前の離島の高校の存続をかけた高校魅力化プロジェクトや当時の山内町長が進めていた離島の存続をかけた取り組み、例えば給与を一部返納しての行財政改革や産業振興を見て、「これこそがSDGsだ」と確信したというのです。
「海士町では島が持続可能であるために島の人たちが色々なことをされていた。それをSDGsに当てはめていくと、知らず知らずのうちにSDGsが出来ていたわけです。」(注1)
(注1)離島経済新聞社 2020/03/07
この記事を読むとSDGsを考えるときに離島が大きなヒントになることがお分かりになると思います。もう一つ紹介しましょう。ネットでSDGsと検索すると最初に出てくる記事です。
「離島が抱える課題のひとつとして、「この島に長く住み続けるためにはどうしていくべきか」が挙げられます。
十年後、二十年後、百年後の未来に島がどうなっているのか、人口は減少していないのか、現状から想像できる離島も少なくありません。
●高齢化が進み、若年層の人口が減っている・都心へ流出している
●満足のいく医療が受けられない
●島における水産業や農業、畜産業などの後継者問題
●観光資源の減少・観光客の減少
●リゾート化による環境汚染
●エネルギー問題 」 中略
「課題を解消していくために、SDGsの取り組みをおこなう離島も少なくありません。宮古島の「エコアイランド宮古島」をはじめ、島根県の海士町や奄美大島など、島の未来のためにSDGsを推し進めている離島は数多くあります。
また、島内および島外の企業などが、特定の離島でSDGsに関する事業を推進していくケースも。離島における『持続可能な未来』への取り組みは島外にも、大きく飛び出しているのです。」(注2)
(注2)エグチホールディングス【SDGs】離島と「SDGs」、離島の未来を考える
この2つの記事から分かることは、離島でこそSDGsが切実に感じられ、離島活性化の実践活動はSDGsに他ならないということです。SDGsの本質は地球と人間との共存だと思いますが、離島には、地域共同体の存続の危機がいち早く発現しており、それに対して必死の取組が行われているということなのでしょう。
離島との私自身の関りは、国土交通省で離島半島振興担当の審議官を2年間務めたことに始まります。それが切掛けとなり長崎県大村湾で無人島田島(注3)における青少年教育を行っている谷山さんとの出会いや地域活性学会での離島振興部会立上げなど、仕事を離れた離島との関りが深まってきました。
(注3)大村湾〜無人島〜滞在記「田島」 (tashima-nagasaki.com)
2017年には国土交通省の政策統括官を最後に中央官庁から勇退しましたが、こうした経緯から、2020年の(一社)離島振興地方創生協会(離創協)の立ち上げに関わり、発足時の理事に就任しました。
離創協は図1のような現状認識と理念から生まれた団体です。
少子高齢・人口減少・地方の過疎化などの問題は、
地方や離島地域の生活基盤を刻々と奪いつつあります。
遠くない未来、
私たちの農林水産業は立ち行かなくなり、
国民全体の食生活に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。
だからこそ今、一次産業の生産性を上げ、
6次産業を振興し、バリューチェーンを構築し、
高付加価値商品のブランド化をこの列島の地方で、
離島で、あちこちから生み出す必要があるのです。
「離島振興」と「地方創生」をめざし、
日本を豊かな「食列島」にする。
私たちは、JAPAN FOOD ISLANDS です。
少子高齢・人口減少・地方の過疎化などの問題は、地方や離島地域の生活基盤を刻々と奪いつつあります。
遠くない未来、私たちの農林水産業は立ち行かなくなり、国民全体の食生活に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。
だからこそ今、一次産業の生産性を上げ、6次産業を振興し、バリューチェーンを構築し、高付加価値商品のブランド化をこの列島の地方で、離島で、あちこちから生み出す必要があるのです。
「離島振興」と「地方創生」をめざし、日本を豊かな「食列島」にする。私たちは、JAPAN FOOD ISLANDS です。
図3
離島の中でも最も厳しい存続条件の中で頑張っているのは、本土から遠く離れた国境離島です。
国境離島は、日本の領海、排他的経済水域の保全上も最重要です。しかし、首都圏や関西圏といった主要なマーケットから遠く離れた国境離島ではそうしたマーケットを対象として産業は成立しにくいのです。
離島の中でも、小さな島にも拘わらず、立派な遺跡や城跡が残っているところが多くみられます。
対馬の西海岸に残る巨大な山城金田城(写真1)は白村江の戦いで敗れた大和朝廷が大陸からの侵攻を恐れて構築し、東国から防人を送り込み防御に当たらせたものです。厳原の10万石並みの町並みや巨大な宗氏の墓所は、江戸時代の大陸外交、国際貿易に対馬藩が大きな役割を果たしていたことを物語っています。(写真2)
今地域活性化のモデルとして注目される海士町など隠岐の島は北前船や交易船の風待ち港として日本海の海の関門であったのです。また、後鳥羽上皇など高貴な方々の流刑の地などとして、独自の役割も果たしていました。
現代の離島はどういう役割を果たしているのでしょうか。第一には、日本そのものの存続を支える領海・経済水域の確保、水産など食料資源の確保、リトリートなど都市市民の人間性回復のための観光資源、島ならではの文化・習俗の保存、これらは全てSDGsそのものです。こうした離島の価値を存続させるためには、経済的な基盤が必要です。現在、離島振興地方創生協会では、島の農林水産業のマーケッティング支援を中心にこの経済基盤の支援に全力を注いでいるところです。
ⒸLet’s Save The Earth! 2023 新年号より