既成概念を超えた先に広がる世界「モルテン」のモノづくり基地[the Box]は熱狂的なコミュニティと独自の文化を育む

株式会社モルテン。広島に本社を構え、国内外に生産拠点をもつ研究開発型の企業である。その研究開発の中心地、テクニカルセンターmolten[the Box]にスポーツのチカラ編集部が潜入レポを敢行した。

細部にわたり丁寧なアテンドをしてくださったのが、[the Box]の構想から10年、コンセプト・サインデザイン・インフラの整備まで携わった、管理本部経営企画部・広報室の参事・中森氏。

モルテンと言えば、バスケットボール・サッカーボールは世界基準で公式試合の定番だがスポーツ用品以外にも、自動車部品、医療・福祉機器、マリン・産業用品の4つの分野で事業を展開している。この4つの事業における研究開発の智慧と人財・情報が集合し良質なコミュニケーションを育みケミストリーを生み出すのがmolten[the Box]なのです。

エンジニア・訪問者の五感を刺激するAmazing trick!!

玄関脇に広がる自然の風景、木々や畑や花壇、羊小屋。「箱庭」をイメージした敷地のデザインは,どこかシリコンバレーに通じる趣がある。会社の敷地に,なぜ羊小屋?”あえて違和感を抱かせるものを設置する事により、エンジニアのアイディアの開放”を狙ったという。どこまでも発想は自由で枠を超えていいんだと。

建物に入ると、巨大な階段が出迎えてくれる。左右で階段のつくりが違うという奇抜さは、けっしてウケを狙ったものでもなく人の心理的な内面に訴えかけるプレゼンテーションとなっていて、階段は上り下りをするものだけではなく、腰掛け、話をする、またはリラックスできる”場所”として、心までサポートをする機能を発見させてくれる。

モノづくりの会社として、自分たちで造れるモノは、自分たちの手で作るという、”自然体”

1Fには跳蛙(とびがえる)食堂と名付けられた200席の巨大な食堂があり(ミーティングスペース・夜は居酒屋・カフェ・BAR)パブリックビューイングやトークショー・音楽イベント、自動車関連のドライブシュミレーターも設置され、プロのレーサーを招聘してドライブシュミレーターを使ったレース大会なども開催されている。

全体のコンセプトとして、丸の内(東京)のオフィスでは出来ないものを作ろう!!東京にありそうなものを地方に作っても新鮮味が無いので、広島でしか出来ないものを造ろうと。ブランドの象徴である焚火もセットされ、スライド式のソファはゴージャスな雰囲気を醸し出している。

また、何よりエンジニアが有機物にふれる事によって、新しいモノづくりに挑戦する”癒やしと刺激の空間”が演出されているのが嬉しい。また、建物の各所にある記名サイン・案内サインのロゴマークや、サインプレートのデザイン、更にプレートなどの製作も自社スタッフで行い、[the Box]のオリジナルフォントも誕生させている。製造業者として、自分たちで造れるものは何でも作っていくという気概が感じられる。

各フロア・エリアごとに散りばめられた創造と癒やしのコミュニケーション空間デザイン

自動車部品の研究開発の拠点となるフロア「the Garage」は、実際に開発された自動車部品の組み付け走行安定性能を確認したり、実験したりと1日中車好きが集まって、いろんな話で盛り上がっていける”車好きが自然と集まる場所”となっている。

また、自社製品の展示方法が独自のセンスでディスプレイされている。一般的に展示室といえば個室空間となっているがモルテンの製品は”渡り廊下”に展示されている。モルテンの取り組む4つの異なる事業の最新リリースが展示され、常に社員の目に触れ、来客はすべての製品を、同一空間で展示会場のように、一度に確認する事ができる仕掛けとなっている。

体現してみると、一見異なる製品群が関連性を持ってトータルイメージとして頭に残っているから不思議だ。モルテンではそのスペースを「Gallery」と呼んでいる。

スポーツをプレイするだけでなく、製品開発や試験研究をする場所が独自のフロアサインで整備された「the Court」だ。シュート練習のために開発されたmoltenB+「シューティングマシン」や機能もデザイン性も優れた、スポーツ用品の開発を担っている。

それぞれの仕事・役割を尊重する企業風土。ガラス張りの人間関係がCrossoverを加速させる

モルテンの掲げるコンセプトのひとつにCrossoverがある。取り組む4つの事業のリソースをクロスオーバーすることにより、進化した次世代の製品が生み出されると考えているからだ。

「the Studio」は正面も裏面もガラス窓ですべての行程・人の動き・表情なども感じる事ができるオープンな空間となっていて、誰もが独自性を持ってコミュニケーションを取っている印象だ。また、「the Medical Lab」は、人の動作解析ができる装置、モーションキャプチャやフォースプレートを常設。さらに体圧分布測定器も完備している、まさに部屋自体が測定器といえるLabo。人間工学の視点で医療・福祉機器を研究開発し、生活の幸福を提供する愛あるラボラトリーである。

人の和が織りなす、高付加価値を提供するための大切な”場所”

[the Box]の構想から建物建設をスタートするにあたり、世の中のカッコイイと言われている建物が、今どうなっているのか?数多くの有名な建物の現状をつぶさに見て回り、プロジェクトチームや社内外からの様々な意見をまとめコンセプトを固めていきました。

モルテンの”4つのブランドが体験できる場所””モノづくりがしたくなる欲求に駆り立てられるような建物”がいいよね。という事でこのmolten[the Box]は完成に至ります。

また、世界に打って出るには海だね!!この一言でこの地に建設が決定され、目と鼻の先には世界遺産の厳島神社があり、海風を感じながら英気を養い大海原を目指して航海へ船出をする。

広島市内へのアクセスも良く、先進的でいてヒューマンなLabo。まさに理想的な開発拠点を建設することが出来ました。

管理本部 経営企画部 広報室 参事 中森真太郎