部活動の地域移行の「メリットとデメリット」!!(部活動の地域移行において求められていること!?)
部活動の地域移行のメリット
地域移行をめぐっては賛否両論ありますが、そこにはメリットとデメリットがあるからです。メリットには次のようなものがあります。
●児童生徒の選択肢が広がる
●専門的な指導が受けられやすくなる
●教員業務のスリム化が期待できる
(1)児童生徒の選択肢が広がる
学校の小規模化に伴い、部活動のメニューが限定されつつある現在、関係する団体や指導的人材の協力を得て地域部活動として実施されれば、
その活動メニューが広がります。また、既存の団体に限らず、団体を設立して新たな種目を提供できる可能性も生まれます。
それによって、児童生徒が希望する活動種目に参加しやすくなるでしょう。
(2)専門的な指導が受けられやすくなる
担当する部活動に関して「指導可能な知識や技術を備えている」と回答した教員は48.9%と半数を下回ります
(参照:教員勤務実態調査〈令和4年度〉の集計〈速報値〉について p.35丨文部科学省)。
教員の資質・能力にかかわらず、担当を求められるケースが少なくないのが実情です。
しかし、地域移行によって、地域クラブに属する専門的指導者や公募による地域の専門家の指導を受けられる可能性が広がります。
(3)教員業務のスリム化が期待できる
文部科学省によれば、教員の約8割が部活動の顧問を担当していますが、担当している部活動の約8割が週4日以上活動(勤務)しています
中学校の活動日数の割合が最も高い週5日の場合、平日の1日あたりの在校等時間は11時間11分です。
通常の勤務時間は7時間45分ですから、超過勤務時間は3時間26分になります。これに加えて土日の活動も担当していることからわかるように、
部活顧問教員の勤務負担は非常に重たいものとなっています。
地域移行が進めば、部活動に要する勤務時間を減らし、勤務負担を軽減することにつながります。
部活動の地域移行のデメリット(課題点)
一方、地域移行についてはさまざまなデメリットが指摘されています。主に次の3点です。
●指導者や受け皿の確保が容易ではない
●児童生徒の安全上の不安がある
●保護者の経済的負担が求められる
(1)指導者や受け皿の確保が容易ではない
地域移行で最もネックになるのが、適切な指導者の確保と受け皿になる団体などがどれだけ確保できるかということです。これらの確保には地域差が著しく、
特に人口の少ない非都市部ではそれらの確保が困難だと考えられます。
また、たとえ受け皿があっても学校から遠い場合、通いに伴う身体的・時間的負担が発生し、気軽に参加しにくくなるでしょう。
(2)児童生徒の安全上の不安がある
学校とは異なる場で教員以外の指導者が担当している際に、体罰がふるわれたり、事故が起きたりする可能性もあります。これまでにも、勝利至上主義に陥った
外部指導者が体罰をふるった事案が表面化しています。安全に関わる配慮がより強く求められます。
(3)保護者の経済的負担が求められる
部活動費は教材費等の実費負担のみでしたが、地域クラブなどの団体に移行されれば、通常、月額数千円の参加費を徴収されることになります。
遠方のクラブへの移行の場合には公共交通機関の運賃負担も必要です。多くの保護者は地域移行化によって部活動が無料から有料化されたと捉えるでしょう。
このデメリットを解消するために、政府や地方自治体は部活動に代わる活動をする団体に補助金を支給しています。
部活動の地域移行において求められていること
以上のような課題があるなかで、地域移行が実現するには、具体的にどのようなことが求められるのでしょうか。
(1)コーディネーターとして社会教育主事や社会教育士の活用を図る
地域移行をだれがどう手がけるかが最も重要な点になります。指導者や受け皿を確保し、これらを学校につなげるキーマンの存在が鍵となるでしょう。
現実的な方策としては、地域のスポーツや文化活動に係る専門的職員である、教育委員会の社会教育主事(社会教育士)や公民館の主事などの人材をコーディネーターとして活用することが挙げられます。あるいは彼らに指導的人材や受け皿となる団体などに関する情報を求めるのも有効でしょう。
(2)「ガイドライン」の理解と遵守
部活動には事故や体罰、さらに担当教員の負担などの懸念事項などが伴う場合があることから、特に教育委員会にはより具体的なガイドラインの作成が求められます。
また、移行先となる運営団体や指導者にガイドラインの理解と遵守を図るために、教育委員会は地域部活動関係者に対する研修と活動評価の実施が不可欠になります。
(3)教員の兼職兼業
部活動の地域移行は教員の負担を軽減するメリットがありますが、部活動を児童生徒の人間形成の場として捉え、引き続き携わりたいという教員もいます。
文部科学省では、そうした事情を加味し、任命権者(教員の場合は都道府県教育委員会)の許可を得れば「営利企業等従事」として扱う、つまり地域移行後の部活動に代わる活動の担当者に副業として従事できるとしています。なお、その場合、時間外労働と休日労働の合計時間が月単位で100時間未満となるように定められています。
ただ、担当教員の異動によって指導者の不在期間が生じるなど、その教員が担当していた活動が不安定にならないような配慮が求められるでしょう。
佐藤晴雄氏:帝京大学教育学部長・教授
転載元:寺子屋朝日 for Teachers
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