学校が主導する部活動改革/茨城県つくば市

生徒たちの「小さな学校だって運動したい、演奏したい」という声に応え、

学校が主導し、地域と民間が協働で取り組んだケース。

地方の小規模校でもこのような取り組みが可能だということを示せた好例をご紹介

学校が主導する総合型地域スポーツクラブ

「茎崎地区文化・スポーツクラブ(KCSC)」の活動とは

学校の部活動に代わる地域の力を借りた受け皿づくりが注目されている茨城県つくば市の茎崎中学校。

部活動の受け皿となっているものの多くは「地域」が主体となっています。

茎崎中学校(茨城県つくば市)の「茎崎地区文化・スポーツクラブ(KCSC)」は、「学校」主導という数少ないケース。

学校長の指揮のもと、小さな学校でも出来る新しい部活動のカタチを目指して実践しています。

部活動とクラブの融合という形で生徒のスポーツニーズに対応している「茎崎地区文化・スポーツクラブ」が注目されています。

茨城県では部活動の運営工夫改善事業として、人数の少ない部活動を拠点となる学校に集めた「拠点校部活動」、バスケットボールとハンドボールなど別競技を兼ねる校内合同部活動や部活動の時間を作れるように曜日選択制授業 を実施する「生徒のニーズに応じた部活動」、クラブチームとの融合で活動を行う「地域支援体制」の三本柱を掲げて、各学校はその方針に則った部活動運営に取り組んでいます。

茨城県教育庁学校教育部保健体育課の塚田勝之指導主事はKCSCに対し、こうコメントしています。

「KCSCは、部活動のない日に、受益者負担で専門家のスタッフによる効率的で細やかな指導を行っていて、子どもたちも生き生きと練習に取り組んでいます。

いま運動部活動が地域クラブチームに移行していくなかで、この取り組みが県内に広がればいい」

KCSCは、バレーボール、ハンドボール、ソフトテニス、卓球、サッカーの運動部活動と、文化クラブの吹奏楽の計6つ。

学校の部活動は平日の週3日(火、木、金曜日)に限定し、活動日以外を「KCSC」に学校施設を開放して活動を実施。

事務局業務は、つくばフットボールクラブに委託し、指導者を統括。バレーボールには地元クラブチーム「つくばユナイテッド Sun GAIA」の選手、ハンドボールには「つくばハンドボールクラブ」の指導者らが質の高い指導を行っています。

活動費をクラウドファンディングで募集

スタート間もないKCSCには課題や問題点も多くあります。クラブの活動費は受益者負担が基本で、現在、クラブに所属する生徒から1500円の月謝を徴収。それでもすべての活動費を賄っているわけではなく、つくば市からの事業補助金を活用して活動を行っているという。

補助金の期間は決まっているので、今後はスポンサーを募り、クラウドファンディングを立ち上げる計画。

支援者を増やすためにSNSを使っての活動報告も随時行っているところである。

部活動改革が「市教育委員会」主導で行われる自治体も

今回のKCSC以外にも、部活動改革の中には「市教育委員会」主導で部活動の存続に取り組む自治体もあります。

◎北海道士別市教育委員会では2019年度から、所属する部活が廃部になった場合、別の中学校の同じ部に入部できる「拠点校方式」を導入。生徒が競技を続ける方法の一つとして注目されています。

◎神戸市教育委員会では、2008年から進学した中学校に希望する運動部がない生徒に他校の団体競技の部活動に参加できるようにする部活動維持の取り組みを行っています。

◎八王子市でも、市内の公立中学校に通う中学生に向けて、新しい部活動の在り方を創造する方策の一つとして「拠点校方式による部活動」および「合同部活動方式による部活動」を実施しています。

今後、希望生徒はいるが部活動がない、部員数が少なく充分な練習ができない、専門的に指導できる顧問がいない、など隣接する学校同士で部活動を行う「合同部活動方式」も増加していくのではないでしょうか。

参考資料:DEPORTARE


つくば市について

つくば市:市名の由来は、市のシンボル的存在である筑波山にちなんだ名称。

市内には国や大手企業の研究拠点が多数存在し、約300に及ぶ研究機関・企業と20,185人の研究者を擁し、このうち日本人の博士号取得者は7,215人に達する。外国からの研究者や留学生が多く、外国人登録者数は133カ国7,565人に及び、総人口の約3.5%を占める。