フランスからの帰国後、休む間もなくスウェーデンに旅立った北川ひかる選手。海外挑戦という夢は、次の夢への手段。「思っていたペースではないですが、ステップをひとつずつ上っている手応えを感じている」という北川選手に話を聞いた。
がんばろう石川、能登と一緒に
北川ひかる選手は、石川県金沢市出身のサッカー選手。中学からJFAアカデミー福島に入り、サッカー選手の夢を追い始めた。年代別日本代表にはU-17から選ばれ、A代表には19歳だった2017年に初招集。今夏のパリで2試合に出場し、1ゴールの活躍で世界に名前を刻んだ。
パリ行きのメンバーが発表され、代表合宿が始まるまで、北川選手は金沢で自主トレーニングを行った。その合間を縫って、小学校訪問や1日署長などのイベントに参加。「大会前でオフもないハードな毎日でしたが、できることがあればやろう、という感じでしたね」と語る。
「地震があって、石川で壮行試合もあって、自分ができることを今はしよう、と。地元が好きだし、福島にいた経験から、震災のつらさや復興に時間がかかるかことを体感していたので、継続的に見てもらうために、できることをしたいと思いました。だから、今後も『能登と一緒に』というメッセージは出していきたい」と誰かのために活動できることのありがたさをかみしめる。
小さなできることを積み重ねて
2017年に日本代表に初招集され、2021年、2022年と試合にも出場したが、定着することはなかった。A代表から遠ざかったこともあったし、リーグ戦での不調もあった。「確かにあきらめようかなって思う瞬間があったりもしましたが、あきらめの悪い自分がいて、またすぐに目標に向かって頑張ることの繰り返しでした」と負けず嫌いが発動したという。
「辛い時期も多かった中でも続けてこられたのは、これまで手にしてきた小さな成果の積み重ねのおかげ。できなかったトラップができるようになった、というような本当に小さなことでも、できることが増える喜びでまた前を向けたというか、あきらめないことが根付いているというか、本当にあきらめなくてよかったですね」と笑った。
「同年代がA代表で活躍する姿は切磋琢磨してきた仲間として嬉しいですが、その場に立てない自分に悔しさもありました。『自分がそのピッチに立てばできるのか』と問われると、イエスと言えないところがあって、まずは自分のことに集中しようと思えた」と振り返る。
神戸で過ごした1年の重み
2023-24シーズン、移籍したINAC神戸レオネッサでリーグ戦6得点。ゴールも決められるウイングバックとして、皇后杯優勝にも貢献。「INAC神戸でしっかりプレーできて、タイトルも取れて、ベスト11にも選出された。日本代表でオリンピック出場と大きな成果に繋げることができました」とこの激動の1年を語る。
「INAC神戸でウイングバックを習得できたことで、代表でもプレーしやすかったですね。特に、パリではINAC神戸から選出された4選手が試合に出られたことが精神的にも大きく、助けになりました」と仲間への感謝を語る。
「プレーではミナさん(田中美南選手)とは特にホットラインで、あてやすいし、タイミングも分かりやすい。どこに縦パスを入れたら相手が嫌がるかについては、世界でも通用すると感じました」と神戸で過ごした1シーズンが中身の濃い、飛躍のための必要なステップになったと語る。
ステップアップのための海外移籍
パリから帰国し、休む暇もなく初めての海外挑戦でスウェーデンに旅立った北川選手。「現状からよりステップアップしていくには、海外がいい。パリでやることが明確になった。個人的にはいつかスペインでプレーしたいという思いが以前からありましたが、それよりもチャンピオンズリーグで活躍したい。それができれば、今後のステップアップにも繋げられると思っています」と移籍先を考えた。
スウェーデンリーグでトップ3に入れば、チャンピオンズリーグに出る権利を得られる。北川選手の所属するBKヘッケンは、UEFA女子チャンピオンズリーグ予選2回戦でアーセナル・ウィメンFC (イングランド)と対戦。9月18日と26日に行われ試合で勝つと本大会への切符を手にすることになる。
「早い時期から海外でプレーしたいって言っていたのですが、それがようやく27歳で実現しました。自分のビジョンとは違いましたが、ようやくこの時がきたな、という感じです。自分の中で理想のなりたい自分がいて、スウェーデンも新たなステップ。今まで一つひとつ積み上げてきたから、成功してもまたその次へ。茨の道にはなると思いますが、自分らしく歩んでいこうと思います」と、北川選手は大きな夢に向かって、自らに課したステップを上り続ける。
■北川ひかる選手について
1997年5月10日生まれ。石川県金沢市出身の女子サッカー選手。5歳でサッカーを始め、中学からJFAFアカデミー福島に入り、年代別代表に召集されるように。早稲田大学入学と同時に、浦和レッズレディースに入団し、2018シーズン途中よりアルビレックス新潟レディース。2023-24シーズンはINAC神戸レオネッサでプレーし、皇后杯優勝にも貢献。リーグ戦では6得点でWEリーグベスト11を初受賞した。2024年8月には、スウェーデンのBKヘッケンに移籍し、今後の活躍が期待される。
【Official Instagram】https://www.instagram.com/hiiiiiiika14/
転載元:SSK様